ケチャックダンス


テルへ戻ると、ロビーでラマツアーズのスアスタさんと待ち合わせて車に乗り、ケチャックダンスを見に行った。日本のクマガイグミ(熊谷組?)が造ったというバイパスを車で走って、ケチャックダンスの劇場へと向かう。

道中、「バリ島にも汚職があるのだ!」という話題が出たので、日本でも国会で疑惑騒動が起きているという話をした。日本の恥をさらすのも「いかがなものか?」と思ったが、今後スアスタさんが日本人観光客と話をするときの話題作りのために、疑惑の中心人物である「坂田利夫に似た代議士」の名前を教えてあげた。
 
バリ島の道路は、右折するのが大変な箇所がいくつもあって、そういう所ではまず、車は中央分離帯の切れている所でUターンした後、しばらく戻って左折するのである。相変わらずバイクの多い道路を走り、開演の30分以上前には目的地に到着した。ここは屋外にあって舞台が一段高くなっており、それをイルカショーのような勾配の着いた座席が取り囲んでいる。観客は90%くらいが日本人で、団体で続々と入ってきたが、我々は早めに着いたので、かなり良い席に座ることができた。蚊の襲来を警戒して厚着をしていったが、なぜか川沿いなのに一匹もいなくて快適である。


チャックダンスは「ラーマーヤナ物語」を取り入れた舞踊劇で、上半身裸の数十人の男達が円陣を組む中でダンスが行われる。物語は、悪魔の大王ラワナに捕われたシタ姫を、ラーマ王子と猿軍とで助け、ラワナ軍に決戦を挑むというもの。円陣の男達の「♪チャッチャッチャッ、チャカチャ・チャカチャ・チャカチャ・チャカチャ・チャカチャ・チャカチャ・チャカチャ…」という、猿の声をあらわす大合唱は実に圧巻である。指揮者や楽器も使わずに、動きや声がピッタリ合っているということも高い技量をうかがわせる。

しかし後から聞いたところでは、円陣の男達は地元の一般ピープルであり、「一家に何人出すように!」とノルマを割り当てられて出演しているものだそうだ。スアスタさんも以前出たことがあると言っていたが、そういえば、どう考えても小中学生としか思えない男の子から、白髪のおじいさんに至るまで、年齢的にもかなりの幅があった。なお、これに人を出さないと罰金を取られたり、ひどいときには村八分にされたりすることもあるそうだ。

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